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妹尾直之 / 明日の木山学区をつくる会会長
妹尾英 / 地域学校協働活動推進員・地域学校協働本部会長

木山小学校「木山わくわくランド」からひも解く 地域と小学校の25年

子どもたちと地域の大人たちが入り混じる。
大人たちが教える、香ばしい匂いの「燻製」に歓声をあげる子どもたち。子どもたちが飛ばす紙飛行機よりも、ひときわ滞空時間の長い紙飛行機を飛ばしたご年配が、子どもたちから羨望の眼差しを浴びる。

音楽室で茶道が行われ、理科室では弓矢をつくり、家庭科室ではクレープづくり。

お邪魔したのは、真庭市立木山小学校で行われた「木山わくわくランド」。
地域の方たちが講師となって、子どもたちにさまざまな体験を提供している。「子どもも大人も楽しそうだな」ぐらいの感想だったのだけれど、お話を聞くと、じつはそこには小学校と地域がともに歩むヒントと軌跡がいくつもあった。

取材に応じてくださったのは、「明日の木山学区をつくる会」会長の妹尾直之さんと地域学校協働活動推進員及び地域学校協働本部会長の妹尾英さん。切り口の違うおふたりから、見えてきたものがあった。
「木山わくわくランド」とは、どのような取り組みなのでしょうか?
妹尾直之さん(以下、直之さん):
子どもたちが普段なかなか体験できないことを、地域の方々が講師となって、子どもたちと交流しながら楽しむイベントです。たとえば今回は「燻製づくり」や「むかし遊び」、「茶道」、「クレープづくり」など7つの講座で開催しました。

妹尾英さん(以下、英さん):
今回は講師が20名ほどでしたが、この「木山わくわくランド」は年2回行われていて、いつもは陶芸の講座もあって、そのときは講師が10名ぐらい来られるんです。ですから通常は約30名の講師が学校を訪れています。大人たちもいるので、毎回賑やかです(笑)。
コミュニティスクールよりも早くに立ちあがった「明日の木山学区をつくる会」
直之さん:
学校と地域の深い連携は、以前からあったように思います。歴史は25年ほど前にさかのぼります。週休2日制が始まった頃です。土曜日が休みになったので、全国的に地元の公民館やPTAが子どもを預かるような取り組みを始めたんです。
当時、私は公民館に携わりながら、木山小学校のPTA会長もしていて。「土曜日に学校へ行こう」というイベントを始めました。地元の方々もボランティアで関わってくださって、地域でできることをいろいろしていました。

それが長らく続いていて、学校の先生も協力してくださるようになり、いまも年2回のうち1回のイベントは「地域とPTAが主催」となり、もう1回のイベント(今回の木山わくわくランド)は「学校が主催」となっています。

もう少し深くお話すると、木山学区(※01)にはもともと「青少年健全育成」の団体と、「人権教育」の団体が学区内の地区ごとにあったんです。でも毎回決められたことをするだけになっていて、「それならもうひとつにまとめたらどうか」となり、「明日の木山学区をつくる会」という、ちょっと展望が感じられるような名前に変えたんです。

その延長線上にPTAも加わって、「土曜日に学校へ行こう」のようなことができる組織となっていきました。地域と学校を取り巻く「明日の木山学区をつくる会」が、すでにコミュニティスクール(※02)のような機能を持っていたんですね。ですから、コミュニティスクールの話が出てきたときもスムースに移行することができました。

※01木山小学校区は、木山地区・鹿田(かった)地区・下方地区・日野上地区・上山地区の5つからなる
※02コミュニティスクールとは、地域住民が学校運営に参加し、子どもたちの教育をともに支える仕組み
声をかけたら「行きます」と言ってくれる地域の人たちの存在
英さん:
そういう大きな流れのなかで、私も学校に携わっています。何よりうちは小学校から3メートルのところにありますから(笑)。
15年ぐらい前からですかね。家の田んぼで水稲をしているので、苗づくりから田植え、草の防除、稲刈り。そして収穫したもち米で餅つきをして、全校児童にきなこ餅とあんころ餅を振る舞うという活動をずっと続けています。

でもその活動に限らず、学校から依頼があれば、すぐに答えられるようにしています。地域学校協働活動推進員でもありますので。
たとえば今回の「木山わくわくランド」の講座内容も、以前はこちらで決めていたのですが、最近は子どもたちからの声「こういうことがしてみたい」と聞いて、それができる地元の方を探すという、子ども中心のカタチになってきています。

地元の人たちはね、みなさん、声をかけたら「行きます」と言ってくれます。断った方はひとりもいないですね。それどころか、どんどん知人を紹介してくれます(笑)。子どもたちが喜んでくれて、それで自分たちも嬉しくなって。どちらも楽しい、そういうイベントになっていると思います。

直之さん:
木山学区にある各地区にはそれぞれ違う歴史や文化があるんです。当然、住民性も違う。一般的に言えば、それだけ異なる住民性がひとつになったらうまくいかないことがあると思います。
ただ、「木山わくわくランド」のような、こうして各地区の大人が学校に集まっていろんな体験を提供することで、大人側も共通の体験をして交流しているように思います。
自分が好き、人が好き、故郷(ここ)が好き
英さん:
子どもたちは素晴らしいです。本当、子どもにはウソがつけません。仕事のほうで若い頃に一度、子どもと約束した時間に行けなかったことがあって。子どもはずっとじっと待っていてくれたんですよね。それ以来、口をきいてくれなくなってしまって。
だからいまは、子どもには「真剣勝負」です。もし手を抜いたら、きっと子どもは見抜きます。でもその分、真剣に向き合ったら「お餅のおじさん、ありがとう」って応えてくれます。それが嬉しいんですよね。

直之さん:
「自分が好き、人が好き、故郷(ここ)が好き」を大切にしています。これは地元の方から、子どもたちには「もっと自分自身のことを大切にしてほしい」「もっと自分自身のことを好きになってほしい」という声があって、校長先生がまとめてくださった言葉です。
学校に携わる地元の方は、共同経営者
英さん:
「木山わくわくランド」のほかにも、授業のなかでミシンを使ったり、そろばんを使ったり。そういうときは先生のサポート役に地域の人たちが入っています。
学期ごとに必ず私たち推進員と、校長先生、教頭先生が集まって、「1年生にはこういうこと」「2年生にはこういうこと」という風に「やること」を共有して、そのために必要な人探しを確認しています。その後、すぐに各方面に連絡を取って、来てもらう段取りを進めています。

直之さん:
そういう連携体制はできていると思います。遠方から来られる先生が多いですから、「地域の方に来てほしい」と思っても、誰を呼べばいいか、どう連絡を取ればいいか、わからないわけですよね。
でも、英さんのような推進員の方がいらっしゃったら、普段から子どもとも接しているから「こういう企画はどうですか?」と提案ができるうえに、人脈もあるから先生と地域の方をすぐに繋ぐこともできる。その存在って本当に大きいと思います。

地域と学校の歩み方ですよね。校長先生も「学校運営協議会に来てくださる方々は共同経営者です。一緒に子どもたちを育ててくださっている方です」という風におっしゃいます。「やってもらっている・やってあげている」という関係ではなく、一緒に子どもたちを育てている、と思うことです。

英さん:
ただ、そのなかで課題もあるかなと思っています。私は今年76歳になります(取材時)。いつまでもというわけにはいかないので、あと5年のうちに誰か、若い人を探せたらと考えています。いわゆる後継者問題です。

直之さん:
木山小学校では2026年度には新入生が10人を切ってしまいます。地域の人たちと一緒にやらないと体育などの団体競技や普段の掃除もままならなくなるかもしれない。ますます地域を巻き込んでの学校運営が必要になってきます。
小学校存続のためではなく、子どもたちのために
直之さん:
ただ、その一方でもうひとつ大切な考え方があるとも思っています。地域のエゴで子どもたちをこの地に縛りつけたくはない、ということです。いまここに木山小学校があって、ここへ通ってくる子どもたちがいる以上は、全力で「できること」を子どもたちに提供したいと思っています。
でも世のなかの一般論として、子どもたちのことを本当に考えるなら、もしかしたら大きな規模で教育を受けたほうが良いかもしれない。まあ良いか悪いかはわかりませんが、そういう流れになっているような気はします。

私たちができることは「明日の木山学区をつくる会」などを通じて、木山学区の地域づくりに携わっていくこと。そのなかで木山小学校がこの地にあり続けてくれるのであれば、全力でサポートします。小学校存続のためではなく、子どもたちのためのサポートをしたいと思っています。
取材に伺った「木山わくわくランド」は、本当に子どもたちも大人も「笑顔」に溢れていた。そこかしこで歓声があがり、自然と子ども、大人のやりとりが生まれている。
地域のご年配がつくり方を伝えた「弓矢」が、的を射たときなんて、子どもたちの興奮が止まないほどであった。「地域に子どもの声が響く」とはまさにこのことと思うほどの歓声だった。

そんな光景が、あまりに自然で「あたりまえ」のように思えるが、そこには地域の人たちが学校と築いてきた信頼関係があり、いまもその信頼関係は現在進行形で育まれている。

木山小学校が地域と繋がっている秘訣は、コミュニティスクールよりも早く「明日の木山学区をつくる会」として組織化していたこと。そして、地元と繋がる英さんのような存在がいること。

子どもたちのこと、地域のことを本気で考えるからこそ生まれた「地域のあり方」が、木山学区にはあった。
取材・編集:甲田智之
撮影:石原佑美