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若者が住み続けたい「まちづくりのヒミツ」。(後編)
大畑伸幸さん・小田圭介さん講演会

若者が住み続けたい「まちづくりのヒミツ」。(後編)

ただ、たくさんの大人と会えば良いのだろうか
大畑伸幸さんと小田圭介さんそれぞれの講演の後、西川正さん(真庭市立中央図書館館長)が聞き手となり、トークセッションが行われました。
>(前編はこちらから)
西川さん(聞き手):
「地域の大人たちとの繋がり」というお話がありました。ただたくさんの大人と会えば良いんでしょうか? という質問をいただいています。どんな大人と出会うことが大切なんでしょうか?

大畑さん:
やっぱり楽しくイキイキとしている大人たちに会ってもらいたいです。楽しそうなオーラの出ている人って、子どもたちもワクワクするじゃないですか。もうひとつは自分の人生の失敗をね、伝えられる人が良いですよね。それを聞いてこどもたちも笑って、「失敗したって大丈夫」というメッセージになればね。
でも何より、否定しない大人です。子どもたちが嬉しいのって、自分たちの言ったことに大人が「いいね!」「そうなんだ!」「大丈夫!」って言ってくれることなんです。この3つを言ってくれる大人と出会えってほしいと思います。

小田さん:
僕は講演の冒頭でお伝えした「社会の形成者」をとても意識をしています。その観点から、どんな大人とも出会って良くて、むしろ多様な大人と多様に繋がったほうが良いだろうと思っています。
地域の教育力って、子どもが「名前を呼べる大人」がどれぐらいいるか、だと思っていて。どんな人であれ、それぞれの興味関心でマッチすることがあるんですね。だから多様に出会って、どこかで行動変容に繋がる学びが得られたら良い、と考えています。
「子どもたち〈のため〉に」と「子どもまんなか」の違い
西川さん(聞き手):
今日、発表された市内団体の皆さんは、子どもをまんなかに置きながらも、自分たちのこともとても大切にしているっていうのが素晴らしいなと思っています。この「子どもたちのため」と「子どもまんなか」ってどう違うのでしょうか?

小田さん:
「子どもたちをまんなかに置く」のと、「子どもたち〈のため〉をまんなかに置く」のって違うんです。「子どもたちのため」って正しいんですよ。でも、そこをスタートにしてしまうと、「自分たちのため」という、ある意味自分勝手っぽく映るところに戻ることができなくなってしまう。
私の根幹はね、「私たち家族が暮らしやすい地域をつくっていきたいな」なんです。自分たちの幸せが根幹にある。「子どもまんなか」っていうのは、子どもをまんなかに置くけれど大人もいて、いろんな人がいて、みんながその場にいて居心地が良いって場をつくることなんだと思います。そういう地域のあり方が、私たち家族も暮らしやすい「子どもまんなか」です。

西川さん(聞き手):
なるほど。よく「子どものためにやってあげて、子どもが喜んでくれればいい」という考え方を見かけますが、それは本当の「子どもまんなか」ではないのかもしれませんね。
本当の「子どもまんなか」とは、裁量を子どもに委ねるということなのかもしれませんね。子どものやりたい気持ちをだいじにすること。ひょっとしたら失敗するかもしれないけれど、でもそこを黙って見守り、手出ししないで見守るということ。

ただ、これはすごく難しい。なぜかというと、私たち全員、今の大人は、子どものときに大人から扱いを受けてこなかったからです。大人はそもそもまわりにいませんでしたから。だから、実践するのはとても難しいんですよね。
大畑さんがおっしゃった「子どもが目をキラキラさせてやる」という状況をつくり出すことは、私たち大人が「子どものため」として、すべてを用意してあげることよりも、はるかに難しい。そして、この難しさや悩みを他の大人に理解してもらうことも、また難しいのだと思います。

小田さん:
「何にもしない合宿」の本質はまさにそのあたりにあると思います。何もしないって言い換えるとメニューがない、つまり「何してもいいよ」とも言えるわけです。大人が用意するのではなく、子どもの裁量に委ねているんですね。
「何もしない合宿」でトラブルが起こったときには
西川さん(聞き手):
それに関して、もうひとつ聞かせてください。「何もしない合宿」でトラブルが起こったときの、子どもたちとの向き合い方についてです。
体育館の用具入れの後片付けがうまくできていなくて、学校から「用具入れはもう使わないでほしい」と言われたんですよね。そして言われた次の回、消灯後に中学生以上が集まって輪になって、――50人以上だったと思いますが、必ず顔が見えるように座って。小田さんがみんなに対話のように話しかけたんです。

小田さん:
思い出しました(笑)。
たしか「ここはみんなで大事にしてきた場所で、僕も大事にしたいと思っているし、みんなも大事にしたいと思ってここに集まっている。この場所を、みんなの大事な場所をこのまま続けていきたいと思っているから、一緒に考えてほしい」みたいなことを言ったと思います。
ここを大切に思っている子たちにもメッセージを届けながら、まだそう思っていない子たちの心にもメッセージを届けたいなと。届けるためには、指示よりもみんなを信頼しながら「ともにより良いものをつくり出す仲間として語りかけたほうがいいだろうな」というのは、感覚として持っています。

西川さん(聞き手):
「指示ではなく、ともにこの場をつくる仲間として」ということですね。いまのお話をお聞きして、「ああ、なるほど」と思ったのは、さきほどの消防団の話です。
消防団に入る肝はそこにあるのではないかと。小田さんは、「みんなはどう思う? 僕はこう思っているんだけど」って言いながら、ちゃんと若者たちと向き合っている。そういう風に対等に向き合ってくれるから、「自分も一緒に活動してみようかな」と思うんじゃないかなと感じました。
事業の継続が目的ではなく、継続のための事業は形骸化する
西川さん(聞き手):
もしもやりたいという人が途絶えた時、思い切って終わらせたほうが良いでしょうか? 人数の少ないコミュニティなので、自分の子どもが卒業したらそれまでという場合があるのですが。――という質問が来ています。

小田さん:
うちで言えば、「やりたい」と言い出さない限り事業は実施しないので、たとえば私が「もうやらない」と言って、続ける人がいなければそれきりで終わって良いと思っています。
その事業自体が継続することにはそんなに意味がなくて、むしろ「やりたい」がカタチになっていく土壌、「やりたい」を言いやすい土壌が育っているほうに重きを置いています。そういう土壌が育っていれば、「やりたい」が途絶えることはないですから。

大畑さん:
継続を目的にすると、形骸化するじゃないですか。たとえば益田市に中学生が中心になって開催しているお祭りがあるんですけど、スゴいなと思うところがあって。毎年「お祭りがなくても良い」っていうスタンスなんですね。
だから毎年、原点に立ち返って「なんでこのお祭りをやるんだっけ?」と実行委員会の中学生たちが地域の人たちと考えている。継続が目的じゃなくて、毎回ちゃんと目的に立ち返っているんです。だから形骸化しない。

もうひとつは、自分がやりたいならやれば良いじゃないですか。どんどんやれば良い。2人でも良いんです。小さなことをたくさん打つことです。
参加人数で評価しない。「楽しいからやる」というシンプルなコツ
西川さん(聞き手):
今回の講演会を聞いて、負担感ゼロを大切にしつつ継続的に人が集まる場をこれからつくりたいと思ったのですが、始めるにあたって設計のコツなどがあれば教えてください。――という質問が来ています。

小田さん:
今日ひとりで参加しておられる方が、この熱量を持ち帰ってまわりに伝えるって大変なんです。伝わらなくて、仲間に対する不信感が募ったりしたらお互い不幸ですよね。
今回、真庭市では八束(やつか)地域で「何にもしない合宿」が実現できたわけですが、それは私が講演した場にたまたま「やろう」と思う方がおられて、さらに校長先生も地域の方々もおられたからです。

理解してもらうのが早かったんですね。だから、コツと言うか、私を呼んでください(笑)。施設管理者の理解を得る必要があったり、地域の人たちに知ってもらいたいと思ったら、もう一緒に私の話を聞いてもらうのが一番です。私は暇ですから(笑)。

大畑さん:
私も暇です(笑)。でもね、思うのは皆さん、何かをするときになんでそんなにたくさん人数を集めようとするんですか? 2人で集まって楽しかった。2人で良いじゃないですか。なんで人数の多さで評価するんですか。
だから少しの人数で小さく始めて良いんです。私たちが私たちのことをするわけですから、評価なんていらないんです。人数が集まることを評価にした瞬間から楽しくなくなりますよ。やっていたら楽しくて、たまたま人が集まってきた。それで良いんです。

小田さん:
それに関連して言えば、うちの何にもしない合宿はお知らせを実施日の2日前に配るようにしています。参加人数にとらわれていないからですが、この「参加人数を気にしない」っていうのは本当にラクです。

西川さん(聞き手):
実際にやっている人が楽しくて、来ている子どもたちも楽しくて。そんな場をつくるために、対話を重ねながら信頼関係を築いていく。そんな付き合い方が、結果として「将来の良き隣人」という関係を育てていく、自分ごととしてまちづくり全体に波及していく。そういうお話だったのかなと思います。
編集:甲田智之
撮影:池田将