森年雅子
NPO法人 manabo-de
「子どもが一人でもいたら、その子のために」 ユースセンターまぁぶる・通信制サポート校真庭やまなみ学園が手がける若者支援
- 放課後になると、続々と小学生・中学生・高校生が訪れる。
久世駅近くにあるユースセンター「まぁぶる」が、多感な中高生にとって「自分らしくいられる第3の居場所」となってもう3年以上が経っている。
そんな「まぁぶる」を運営するNPO法人manabo-de(マナボーデ)。
2026年5月に真庭市と「若者支援に関する包括連携協定」を締結して、久世地区に限らない居場所づくりや個別相談、また通信制サポート校「真庭やまなみ学園」の開校など、より一層中高生への支援の輪を広げている。
多岐にわたるmanabo-deの取り組みを知るべく、理事長の森年雅子さんにお話を伺った。 
- もともと高校の教員だった森年さん。なぜmanabo-deを立ち上げたのでしょうか?
- 地域の人たちと一緒に授業をつくる「探究学習」が楽しくて。
登山のまえにできるオリジナル体操を一緒につくったり、地域の人たちVS女子高生のソフトボールをしたり。自由度の高い授業にとても魅力を感じたんです。
ただ、責任ある役職に就くことが増え、少しずつ生徒たちと直接関わる時間や機会が減ったんですね。「生徒たちと関わることが好きだから教員になったのに」と思ってしまって。だから生徒たちと直接関われる「現場」を地域に求めて退職を決意しました。
それと同時並行で、コロナ禍で思うように授業ができないなか「それでも教育を止めるわけにはいかない」と勉強会を始めたんです。SNSで「教育に関心のある方ならどなたでも」と発信したら、全国から人が集まって120名を超えるコミュニティになって。
その勉強会で学んだことを子どもたちに還元しようとなって、2022年から中高生の居場所となる拠点構想がスタート。2023年8月にNPO法人manabo-deを設立して、翌9月にユースセンター「まぁぶる」をオープンしました。 
- 「まぁぶる」はどのような場所なのでしょうか?
- 学校でも家庭でもない、子どもたちにとっての第3の居場所「ユースセンター」として、「やってみたい」「知りたい」「話したい」「遊びたい」ができる空間です。
ボードゲームや漫画もあって、卓球台もあります(笑)。勉強や、ちょっとした悩み相談ができるスペースも用意しています。もちろん利用は無料です。
子どもたちが「やってみたい」と言ったことを一緒にやる場所なので、例えば「駄菓子が買えるコーナー」があるのですが、「駄菓子屋がほしい」という子どもの言葉から始まって、子どもも店番ができる仕組みを一緒に考えました。
また後ほど説明できればと思いますが、そのほかにもmanabo-deとして、「クリエイターズクラブ」「まぁぶるkitchen」「まぁぶる落合」「放課後ユースステーション」「ほっこり相談室」「mana-link個別相談コーナー」などもしています。 
- 今回、真庭市と「若者支援連携協定」を結ぶことになった経緯と、それによる変化を教えてください
- ひとつは、高校生ですよね。こども園は子育て支援課、小学生と中学生は「真庭市立」の学校に通っているので教育委員会が担当となっている。ただ高校生は「岡山県立」の場合が多くて、居場所運営をしていても、真庭市役所のどの課が窓口になってくれるのか担当というのがなかなか難しいんです。
でも真庭市としては「中高生への支援」ももっと広げていきたい。そこで「一緒に中高生への支援をしていきませんか?」という話になって。私たちが「課を跨ぐ存在」として連携協定の締結に至りました。
協定を結んだことで、学校へ入りやすくなりました。
また、真庭市との情報共有がしやすくなって、こちらで「課を跨いで相談、情報を集約」できるようになったのも大きいです。 
- 若者支援の具体的な内容も教えていただければと思います。まず「放課後ユースステーション」とはどのような取り組みなのでしょうか?
- 放課後や長期休業中に、学校の空き教室や交流スペースを使わせてもらって、私たちが出張ユースセンターを開く活動です。
内容は学校の要望によるのですが、先日は高校の交流スペースをお借りして、お菓子やジュースを用意して、ボードゲームも持っていって、みんなで一緒に遊びました。
ここで大切にしているのが、ただ遊ぶだけではなくて「心がひらく場所をつくる」ということです。学校ではなかなか本音を言いにくい子どももいると思うのですが、安心できる空間で、先生でも親でもないユースワーカーがいろいろ聞かせてもらう。
学校のこととか、進路のこととか。メンタルケアもそうですね。また、進路相談――面接の練習とか小論文を見るといったこともしていく予定です。 - 「ほっこり相談室」についても教えてください
- 真庭市立中央図書館の一角(飲食スペース)を借りて、毎週水曜日の13時から17時まで予約不要で相談ブースを設けています。13時ぐらいからは不登校のことや学校でのちょっとした気になることなど、保護者さんが来られることが多いです。
30代までを対象としていますので、「仕事に行きづらい」など、仕事に関する相談を受けることもあります。
ただ、学校が終わる夕方になると、子どもたちがドドドと押し寄せます。多い日には50人ぐらい来て、スタッフと一緒に遊んだりしています。「今日、まぁぶるあるから」と言って中央図書館へ駆け出していくみたいで。子どもたちの遊び場になっています。
相談で言えば、顔を出したくない、匿名が良いという方に向けたオンライン相談「mana-link(マナリンク)個別相談」も実施しています。また、イベント開催時に個別相談の窓口を設けることもあります。
いろんな相談があるんですけど、「全日制と通信制で迷っているんです」というのもあります。「うちの子の特性を考えたら全日制のほうが良いですか? 通信制が良いですか?」など、通信制って保護者さんにとってはまだまだブラックボックスな部分が多いので、丁寧にお伝えしています。 
- 通信制で言いますと、通信制高等学校サポート校「真庭やまなみ学園」を開校されたんですよね。きっかけを教えてください。
- 高校の先生をしていたときに、頑張ったけれどどうしても通えなくなってしまって、通信制へ転校した子が何人かいたんです。でも転校した途端に、通信制からの情報が入って来なくなる。「あの子は今どこで何をしているんだろう」がわからなくなってしまう。
たとえ転校しても、その子は私にとって生徒なので、「どこで何をしているかわからない」ということに、もやもやしたものをずっと感じていました。
また、真庭には通信制高校がなくて、津山市か岡山市まで行かなければならない。でも生徒の特性や家庭状況によっては、電車で通えないという子たちもいて、選択肢のなさから引きこもりになってしまうパターンも見受けられる。
まぁぶるにも通じる思いなんですけど、「悩みを抱えている子がいたら、そのひとりのために自分は生きれば良い」という気持ちがあって、だから通信制の「真庭やまなみ学園」をつくりました。 
- 「真庭やまなみ学園」の特長を教えてください
- 島根県の通信制本校のサポート校として、週2回通学しながら卒業に必要な単位を取得していく形です。ただ、勉強するだけではなくて、真庭だからできる「体験活動」を多く取り入れているのが特長です。
通信制によくある完全オンラインにしていないのは、「社会に出る」ということを大切にしているからなんです。
また、一番こだわっているのは「子どもたちが自分で学校をつくる」ということです。開校したばかりなので、まだ机とか揃っていなくて。「どんな机が欲しいか、どこにどういうスペースが欲しいか」から生徒に決めてもらっています。
入学式も、4月から1か月かけて生徒自身がつくりあげて、保護者へ向けて「高校がんばるからからね」と伝えていました。卒業式も、修学旅行の行き先も、すべて生徒が考えていく予定です。 - 開校から3ヶ月ほど経ちましたが(取材時)、運営はいかがですか?
- 生徒たちの取り組む姿勢、表情を見ても順調だと思います。
ゼロから始めたというよりは、やっぱり「まぁぶる」での活動が下地になっていて、スタッフのなかにも教員免許を持っている者がいますから、サポート体制が早く構築できたのが大きいですね。
うれしかったのは、入学式の日にメディアの取材が入ったのですが、生徒のひとりが「全世界に発信する!」と言って、みずから進んでカメラの前に立ったこと。
また「これからやってみたいことは?」とメディアの方に聞かれたときも「巫女体験がしたい」と自分の思いを話していて。そういう生徒からの思いは、この真庭をフィールドにしてやっていきたい。真庭やまなみ学園の目指す姿ですから。 
- 多岐にわたる活動の、その原動力はどこにあるのでしょうか?
- 子どもが好きなんですよね。「子どもがひとりでもいたら、その子のために」と思う。
「先生になりたい」「先生になるしかない」と小さな頃から思っていたんです(笑)。でも先ほどもお伝えしたとおり、高校で役職がついたことで現場から遠のいたような気がして、生徒と直接関わる機会が減ってしまって。
「まぁぶる」や「真庭やまなみ学園」では、子どもたちひとりひとりと関わることができる。それがうれしいんです。来てくれる子どもたちの「これがやりたい!」ということを一緒にやっていけるので。
例えば、「クリエイターズクラブ」もそうです。子どもたちの「やりたい」を一緒にやっていく。ケーキづくり、シール帳づくり、色水遊び。子どもたちの興味を聞いて、「やりたい」「やってみる」に繋げています。
学校へ行くのが難しい子も、ここでの活動が「図工」や「生活」に繋がっていますので、学校へ報告して出席認定ももらえるようになっています。 - 「まぁぶるキッチン」は中高生が運営する子ども食堂ですよね?
- 調理に興味がある中高生が始めた子ども食堂なんですが、「ただつくって提供するだけでは交流が生まれないよね」ということになって、小さな子どもたちも一緒に調理するスタイルにしました。月1回開催していて、メニューも中高生が考えています。
もうひとつ、大切なこととして「中高生が自炊できるようになる」も目的にしています。大学や専門学校へ進学したら、真庭を出て一人暮らしをする子が多い。そのときに困らないよう自炊ができるようになる。
「社会課題の解決」と「自分のスキルアップ」が両立するwin-winの場となるよう実施しています。 
- 今後の展望を教えてください
- 真庭やまなみ学園が始まったばかりなので、力を入れていきたいと思っています。
また、落合エリアには新しい拠点「まぁぶる落合」もプレオープンしていて、夏休みを目処に地域と連携した活動を本格始動させる予定です(令和8年夏頃予定)。
根本的なところでいうと、こういう場所が必要とされていることが、子どもたちにとって本当に幸せかどうかはずっと考えています。
「まぁぶる」でいえば、昔の子どもたちみたいに、寄り道しながら2時間かけて家に帰れる——そういう自然発生的な居場所が街の中にあることが理想かもしれない。でも今の環境ではそれが難しくなっているから、私たちのような場所が必要になっている。
通信制の高校だって、もっと多様な学び方が世のなかの当たり前になれば必要なくなるかもしれない。子どもたちにとっての幸せは何か。学びとは何か。
そういう問いを常日頃からスタッフと共有しています。若者が真庭をフィールドに何かやってみたいと思える環境をつくることを、続けていきたいと思っています。
聞き手・編集 甲田智之 