
子どもの日に「子どもの不登校」のことを考えてみました
2025年5月5日(月・祝) 14:00~17:30、真庭市立中央図書館(以下、中央図書館)にて、「ライブラリーそもそもトーク Vol.5 『子どもの日に考える 不登校の現在(いま)』」が開催されました。主催は中央図書館。
講師は、埼玉県川越市で親の会を主宰されている木本晃子さん。
会場には、真庭市内外からこのテーマに関心を持つ皆さまが集ってくださいました。
真庭市立中央図書館ホームページ :https://lib.city.maniwa.lg.jp/
今回は当日のレポートをまとめます。
なぜ、子どもの日に「不登校」?
はじまりにあたり、主催である中央図書館の西川館長は、以下のようにお話しになりました。(あいさつの抜粋)
「令和5年度、小中学校の『不登校』児童生徒は全国で34万人に上ります。真庭市内でも、小学生が25人、中学生が67人。不登校を含む長期欠席の中学生は111人、実に10人に1人という割合です。 子どもたちはどんな毎日を過ごしているのでしょうか。 どうして不登校になるのでしょうか。 不登校の背景には、どのような学校や社会の姿があるのでしょうか。 今日は、皆さんと共に、①不登校について学び、②子どもたちが置かれている状況―不登校から見える学校や社会―について一緒に考えていきたいと思います。 今日は『子どもの日』です。私たち大人が子どもたちにどんな環境を提供すべきか、一緒に考えていただければ幸いです。」
木本晃子さんのお話
▼自己紹介
講演会が始まり、まずご自身の経験(お子さんが不登校を経験された保護者としての当事者意識)を話されました。 それは、お子さんの不登校に向き合う中での、親としての複雑な思いや葛藤などを率直なものでした。(以下、抜粋)
「息子は、望んで不登校になったわけではありません。行けるものなら、行きたかった。親の私も、子どもに学校に行ってほしかった。不登校は子どもの怠けでしょうか? 子育ての失敗でしょうか? 不登校とは誰のどんな問題なのだろ・・・どうか一緒に考えていただけると幸いです。」
▼図解不登校
木本さんの自己紹介の後、ご自身が作成された『図解不登校』の紹介がありました。
この図解は、「学校に行く・行かない」と「子どもの状態が良い・良くない」の2軸で状況を整理しています。
「不登校」というと、つい「行くか行かないか」で判断しがちですが、実はそれ以上に大切なのは子どもたち自身の状態であると気づかされました。 なぜなら、子どもたちの状態が良くないことは、最悪の場合、命に関わる問題にまで発展し得るからです。
また、目の前の子どもの状態を見極めるためには、親の心に余白と安心が必要であり、当事者同士が安心して対話できる場が求められていると感じました。

※図解の詳細については、木本さんのnoteをご覧ください。 https://note.com/futoukoukawagoe/n/n48225721bba0
▼講演会の内容
講演の内容は、不登校の現状から回復など、多岐にわたる内容でした。
以下に、ほんの一部を紹介します。
【不登校の現状】
・文部科学省による不登校児童生徒数の推移グラフ(1991‐2023)をもとに、変化や現状、ならびに就学に関する法律や施策、不登校の子どもたちの状態についての解説
・支援や居場所は多様に用意されているが、実際には自宅のみで過ごす子どもがほとんど。
・子どもにとっての不登校という状態は「問題の始まり」ではなく「問題の終わり」である。
【不登校問題の正体】
・不登校は誰にでも起こりうる現象。不登校に至る要因やきっかけ、状況は多様かつ複合的で、実は、本人にも「なぜ学校に行けないのか?」という理由が分からないということも多い。
・そのため、「なんで学校に行けないの?」という問いが、本人や家族を余計に追い詰める結果につながる。
・標準的な子どもに合わせた現在の学校の仕組みでは必ず合わない子がおり、一部の子に過度に負荷がかかっている状態。
・不登校は子どもや家庭の問題ではなく、子どもに合った学びの環境を保障できていないという社会の問題。
【回復への道のり】
・「回復」の定義を「子どもが心身ともに元気になること」とし、不登校の各段階で何が必要かについて説明。
・不登校支援においては子どもが抱く「強い自己否定と対人不安」を軽減する必要があり、『安心』の保障が極めて重要である。そのためには周囲の大人が子どもに「何をするか」よりも「何をしないか」が大切。
・この『安心』は子どもだけでなく、親や周囲の大人にとっても最優先である。
【子どもが不登校になったら】
・お子さん2人が不登校という経験から、それぞれのお子さんで、実際に利用された相談支援先や場所についてまとめられ、1人目と2人目の利用先の違いについて説明。 ここでも、親が安心できる環境の重要性が改めて示された。
講演会の後の振り返り
90分の講演会終了後、休憩を挟んで希望者による座談会が行われ、講演会の内容や日頃の思いについて意見交換を実施。
全体を通しての私の感想
さまざまな支援が存在するにもかかわらず、支援に結びつかず実際に家で過ごす子どもが全体の8割にのぼるという数字を知り、どのような支援があっても、学校以外とのつながりが持てない子どもたちの『教育を受ける権利』がどうなるのかと考えさせられました。
また、問題が発生した際、どうしても子どもを現状の環境に合わせようとする傾向がありますが、問題の背景を考慮すると、環境を変えることで安心感が得られることもあり、これはユニバーサルデザイン、合理的配慮、個別支援の考え方ともつながっているのではないかと思いました。
さらに、不登校の問題の枠を超えて大切だと感じたのは、「決めるのは子ども自身」であるということです。
日常の些細な決断から自分で選んでいるという実感を得ることの重要性を改めて感じました。
少子化の進行により相対的に大人の数が増えている中、経験豊富な大人が子どもたちのために先回りして保護しようとする気持ちは理解できるものの、それが本当に子どものためになっているのか、考える必要があると感じました。
今回の講演会の中では、「自己決定」とは、子ども一人で全てを決めるのではなく、たとえ周囲のサポートを受けながらも、自分が尊重されたという実感や、周りと協力して自ら決断したという手応えを伴うことが重要とありました。
最後に、不登校の状態のなかで、子どもの本音、大人の本音。いずれも個々にあると思います。親は子の幸せを願い、学校も地域も同じように願っているのではないでしょうか。
不登校の問題は「誰の責任か?」を問う傾向がある一方で、今目の前にいる子どもや家族に何が必要か、どうすれば安心につながるのかを共に考えるヒントが得られたと感じました。
真庭市内の身近な支援
子育て中は不安を感じることも多いですが、一人で抱え込まず、周囲の力を借りることが大切です。不登校支援は自治体ごとに取り組みが異なります。
ここでは、真庭市教育委員会が行っている支援の情報を共有します。
▼真庭市教育委員会 学校教育課
不登校などに関する相談先の情報やリーフレットがホームページで発信されています。
ぜひ一度ご確認ください。 https://www.city.maniwa.lg.jp/soshiki/54/79964.html
※現在掲載中のリーフレットは令和6年度版です。
最新情報の掲載時にVIVAまにわのお知らせにてご案内します。
▼真庭市教育委員会 生涯学習課
家庭教育支援チーム『ふらっと』
・おしゃべり広場
・出張おしゃべりカフェ
・ふらっとのおしゃべり会~ゆっくりさんと凸凹さんのお子さんの保護者の会~
・ほっとこーなー(2025年5月~スタート)
・遊びの日
※『ふらっと』の活動については、真庭市生涯学習課のホームページ等でご確認ください。
ふらっとの情報掲載ページはこちら
https://www.city.maniwa.lg.jp/soshiki/53/41592.html
最後に、一人の親として、もうすぐ子育てを終える私自身は、我が子が不登校にならなかったものの、きっとさまざまなことを考えながら学校に通っていたのだろうと振り返るとともに、子どもとの関わりを改めて見直す機会となりました。
(文責:真庭市郷育魅力化コーディネーター 秋田智恵子)