心温かい♡鹿田~子ども食堂から「みんなの居場所づくり」へ~
みなさんは、子ども食堂という活動を聞いたことがありますか?
子ども食堂は、無料または低価格で、子どもたちに食事を提供する活動です。子どものための活動であり、貧困対策や孤食解消のための活動というイメージが強いかもしれませんが、この活動はそれだけが目的ではありません。食をとおして、子どもも大人も、そして地域のお年寄りも、多様のつながりを育んでいく活動でもあるのです。
この夏、鹿田地区ではそんな、みんなのため「子ども食堂」の活動が始まりました。そもそも、どうして子ども食堂をやろうと考えたのでしょうか。発起人の一人、辻佳江さんにお話を伺いました。
「うちは祖父母が同居していない、いわゆる核家族なんです。夫婦共働きで、子どもはずっと学童クラブに通っていました。ところが5年生になって、学童に通えなくなりました。すぐに学校の長期休暇、夏休みのことが心配になりました。子どもは日中ずっと一人で家にいることになるからです。何より、お昼ご飯はどうしたらいいだろうと思って……。それで同じ子育て世代の友だちに相談しました。一人は会社経営者、一人は栄養士の友人です。話をしているうちに、私たちと同じように共働きで困っている人は他にもいるはずだと考えて、すぐに活動をはじめようと意気投合しました。地域の先輩である大月説子さんとも知りあいました。活動するならば、住民会や地域団体などにも、きちんと相談をしたほうがいいとアドバイスをいただいて、地域の皆さんにも賛同をいただいて、鹿田公民館で活動をはじめることになったんです」
公民館には調理室の設備があります。さっそく保健所にも相談し、とんとん拍子で話が進んでいきました。まずは目標としていた夏休みに週3日、子ども食堂をオープンしました。参加費は子ども200円、大人500円。参加者は30人前後、うち小学生は10人から15人ぐらい。14日間で、延べ442人でした。
「子ども食堂では、子どもも大人もお年寄りも、みんな一緒に食事をします。回数を重ねるごとに、自然と顔なじみが増えていきました。公民館には卓球台があって、年齢に関係なくやりたい人が参加して楽しんでいます。こどもたちがプレイしていると、お年寄りも楽しそう。久しぶりにやってみようとも思われるようです。とは言え、お年寄りのいちばんの楽しみは、やっぱりお茶をしながらのおしゃべりでしょうか。思い思いに過ごされています。ある日、参加されていたお年寄りに『先週はお孫さんが来ていたんですよ』とお伝えしたら、びっくりされて……。『うちの孫は家にばかりおると思っていた』とおっしゃるんです。何かきっかけがないと、家に閉じこもるのは、みんな同じ。だから、みんなの居場所づくりが大切なんだと、改めて気づきました」
一方で、大月説子さんは、以前から真庭市の介護予防・生活支援サービス事業のひとつ、「ささえあいデイサービス」を鹿田地区でやりたいと以前から考えていました。
「ささえあいデイサービスは、地域住民が主体となって仲間づくり、生きがいづくり、介護予防などの活動に取り組む事業です。定期的に集まり、市が推奨する介護予防に資する体操などを行います。でも、そういう場所に、いつもお年寄りだけが集まっても楽しくないですよね。そこに子どもたちがいたら、もっとお年寄りは元気になると思いました。ささえあいデイサービスでも、食事の提供が必要です。それで、辻さんに一緒にやりませんかと相談しました」
こうして、子ども食堂(Katta Kitchin憩)と、ささえあいデイサービス(鹿田デイサービス憩)という2つの活動が、鹿田の居場所づくりの両輪として動き始めました。
毎週土曜日は、ささえあいデイサービスの日。子ども食堂のスタッフもランチの提供を手伝います。みんながせっかく集まるならば何か一緒に体験活動をしようということで、11月30日は「しっくいアート」の創作活動も実施しました。来年1月には、地域の高齢者の指導の下に、子ども達にも声をかけて干支づくりを計画しています。
まず、はじめは健康体操。お年寄りは、もちろん全員参加ですが、この日、集まったお父さん、お母さんも、日頃の運動不足の解消しようと一緒になって身体を動かします。一方、子どもたちは自由気ままです。公民館の後ろで、楽しそうにかくれんぼをしている子どもたちもいます。
健康体操が終わると、いよいよ「しっくい(漆喰)アート」です。大人も子どもも混ざって、4つのグループに分かれて創作活動がはじまりました。
「しっくい(漆喰)って、ケーキの生クリームみたいだね」
「下半分は『鹿田踊り』を描くから、上半分は、お姉ちゃんたちで自由にやってくれる?」
「干支のヘビを作りたいのか。よし、おじさんも手伝うわ」
「やっぱり小さい子たちは、芸術家だねえ」
そして、今日のランチは、おにぎりとお吸い物、そしてパンダの顔のカタチをしたパン。デザートのプリンは、地域の方が手作りし、差し入れをしてくれました。
「食材の提供は、醍醐の里や地域のスーパーも協力してくれます。地域の電気屋さんは、地域指定のふるさと納税で貢献してくださっています」
「先週は、地域の行事として『Bar憩』を企画しました。ランチの代わりに、夕方から軽食やおつまみを提供して、子どもと大人も一緒にカラオケをやりました。カラオケの準備は、お年寄りが率先してやってくださったんです。本当に助かりました」
みんなの居場所づくりは、一人ひとりが主役です。おのずと、それぞれの役割が生まれます。役割があることは、幸せなことでもありますね。そして一人ではなく、みんながいるからこそ、やりがいも、生きがいも、思いやりも生まれるのです。
一人の男の子が、赤、青、黄色の3色の漆喰を使って、大きな文字を描きました。
この虹色のメッセージは、鹿田のコミュニティそのものを表しているようです。
(文責:郷育魅力化コーディネーター 吉野奈保子)