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【後編】5/19 西川 正さん講演会 & 遊ぶ機会づくり交流会

▼【後編】なぜ、今遊びなの?真庭市教育委員会が力を入れている理由って?? 
 引き続き、VIVAまにわ編集員(兼 郷育魅力化コーディネーター)かきが、当日の様子をレポートします。後半は、「なぜ今遊びなの?」西川さんの講演会でお話された内容に対して、当日自分が理解した内容も踏まえご紹介します。

▽今、なぜ遊びなの?その背景を知る
 さて、「今、なぜ遊びなの?」という問いに対して、西川さんによる解説によると、「こどもの自尊感情が守られていない」という指摘がありました。その背景には、遊びを通じた「無我夢中になる時間」が減り、こども自身が自己選択 / 自己決定する機会を失い、今の自分でなんかいいよねと思えていない。だからこそ…、ばかばかしさも含めてこどもがこどもとして過ごす遊びの時間が必要なのでは?とのこと。

【西川さんの言葉】
・日本の若者の自尊感情は国際的な比較調査でみると、とてもとてもとても低い。
・そしてこの社会が変えられる…と思っていない
・なぜ自尊感情が低いのか??みなさんはどう思いますか??

【西川さんが大学で教えている学生さんの声】
・集団行動を求めすぎる
・言われたことをやることが多い・育つ課程では「あれしろこれしろ」の指示語がたくさんあったのに、大学生になったらいきなり「自分で考え自分で決めなさい。」
→その言葉は、急に素っ裸で北極に投げ込まれる…ような冷たい厳しい声と感じる。

 学生さん達の「リアルボイス」には、突然はしごを外される感覚…の怖さ辛さが伝わってきます。そうだよねそうだよね…、ちょっとずつ経験を積み自信をつけたかったよね…と感じる言葉です。

 一方で、子どもは体力をつけるために遊んでいるんじゃない…、ということを忘れないようにしたい。遊びは「他に目的はない」行為。「体力をつけるために遊ぶんじゃない。遊ぶためには体力がいることはあってもね(笑)」(西川さんのお友達の保育園の園長先生の言葉)結果、育っていく力があったことに後からふと気づく…、それが遊びの世界とも言えます。

▽社会の変化…と放課後の主導権の在り方 / これからの学びと遊ぶ機会の在り方

 西川さんがご自身の子育て経験を紐解きながら…、こどもが育つ社会環境の変化を解説してくれました。1967年生まれの西川さんが大学卒業後、学童保育で働いていたとき(1980年代後半)は、まだコミュニティモデル(=保護者と学童支援員による共同保育モデル / サービスではなく、こどもをまんなかにこどもの育ちがどうあったらいいか…、喧々諤々の意見交換ができる状態)が機能していたそうです。ご自身が親になった32歳のときは(1990年代後半から2000年代前半)のときには、保育はサービスモデルにとなり、預かった側(サービス提供者) / 預けた側(サービス受給側)の両者で隔たれ、保護者からの苦情により、禁止とルールが増え、両者不信感が募り、親子が孤立する状況。(ん?なんだかすごい緊張感やな…。)
子どもの力を信じて見守る保育…というより、子どもへの監視の眼差しに変化せざるを得ない…社会変化が起こっていたそうです。こどもが勝手に遊んでいた時代から、大人が横にいることで「あれやっちゃだめ / これやっちゃだめ」になってしまう…。そんな窮屈な変化が起きていました。

▽じゃあ、どうしたらいいの?西川さ〜ん??
 苦情が入ることで、規制 / 禁止 / 厳罰化…と大人の都合で子どもの声が小さく扱われがちな今。だからこそ、こどもの「やってみたいな」という小さな声に耳をすませ、こどもの主体性に寄り添いつつ、失敗を含めた挑戦を面白がる…、そんな関わりをもてる大人のまなざしや姿勢が必要。

 多大化(=こどもに対して、大人の数が多すぎるぞ問題)の中、西川さんからこんな提案がありました。「これからこどもが育つ環境には『ファシリテーターがいる学びの場 / プレーワーカーがいる遊びの場』があり、真庭市内でプレーワークの視点を持つ大人が少しずつでも増えていくことが、こどもも大人も幸せな環境ではないか…。」
少子化の今、時代の変化と共に、子どもへの関わり方もアップデートする必要がありそうです。

▽今こそ、ばかばかしいと不要不急をご一緒に!
 西川さんは娘さんが保育園に通っている時、夏祭りや運動会などの行事の時、「フェンス際の難民パパ」(誰ともコミュニケーションがとれずフェンス際で携帯電話を握っているパパ)の救出活動も行っていたそうです。(発想がいちいち秀逸…)一体それはなんなんだ…??とお話を伺っていると、ずばり!「人力遊園地」!!お父さんが肩車をして人力遊園地をする…という役割があることで、こどもは楽しい!パパもなんだか嬉しくなっちゃう…そんな写真を見せてもらいました。他にも運動会に乱入して、大きなかぶを上演したり、「みんなの焼き芋タイム」を実施したり。共に食べる時間を通じて仲間になってきた…とのこと。

 「楽しいね、嬉しいね」というわかちあいの中で知り合いになっていくと「おたがいさま〜」が言える関係性になっていく。そうすれば、こどもの喧嘩に親が仲裁しなくても、両者がこどもの成長を気長に見守ることができる。

 「一緒に食べる / 遊ぶ / 働く」この時間をなくして、仲良くなれます?西川さんが会場のみなさんと共に考えたい問いとしてなげてもらったメッセージでした。

▽プレイワークの視点ってなぁに?
✧指導 : これをやらせましょう
✧サービス:これをやってあげましょう〜
✧プレイワーク:子ども これ、やってみたい!

出典:NPO法人あげお学童クラブの会 http://ageogakudou.org/concept

 この時間のありよう…が人生の時間。こどもがやりたいことに取り組み、わちゃわちゃしたプロセスの中に喜びがある。その分時間はかかっても大事な寄り道時間。

 西川さんからプレイワークの説明を伺いながら、かきが感じたこと。コスパ(コストパォーマンス=支払った金額に見合う効果や満足度。「費用対効果」のこと)、タイパ(タイムパォーマンス=投じた時間に見合う効果や満足度、即ち「時間対効果」のこと。)エネパ(エネルギーパフォーマンス=自分の時間、お金、行動に使うエネルギーの「エネルギー対効果」)…と、かける労力全てが無駄なく成果となり、効率の良さが優先されがちな今、思うようにならない予定不調和な時間、遠回りや寄り道時間もゆったり楽しめる…寛容さ。そんな心の余裕も持てるといいのかもしれませんが…。さて、みなさんはどう思われますか?

▽【おわりに…】ところがどっこい、必要なのは大人も安心できる場だった


 最後に、レポーターとしての気づき。こどもが育つ環境づくりがどうあったらいいか…ということを考える中、大人の私達にも必要なのは安心できる機会と場と関係性。そしてお互いの存在を頼みにし「おたがいさま〜」をゆったり伝えあえる程よい距離感ということが見えてきました。

 参加者のみなさんに尋ねた「今日最も心に残った言葉はなんですか?」という問いに対して、こんな回答がありました。「大人も関わり合う時間があれば、『遊び』がうまれ、関係が緊張状態にならない。」大人にこそ、遊びが必要ではないか…と思ったから、この言葉を選びました…とのこと。

 「ここだったら、なにか自分にもできるかも!」という安心感があること。

 息を深く吸い込んで、一旦深呼吸して緊張をほどく。相手の呼吸を感じながら、相手も自分の経験談も楽しみながらわかちあう。対話を通じて安心感で満たされること。今回の企画のように、みなさんと共に対話のキャッチボールを楽しみ「手作りの時間」を共に作っていけたらいいな…と実感する時間でした。「やってみたい」を少しずつ。 

文責:郷育魅力化コーディネーター かき こと 大垣内 弘美。

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